卵巣癌・卵巣ガン・症状・検査・療法

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卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)・卵巣構造・卵巣癌の種類・症状・検査・療法・転移・再発



     
概要/卵巣癌(卵巣ガン)

     卵巣に出来た腫瘍のうち、悪性のものを卵巣癌といいます。殆どは卵巣腫瘍の悪性化したものです。発症年齢

     も、今までは40〜50歳代に限られておりましたが、近年では若年層(30歳代)にも確認され増加傾向の

     癌です。妊娠、出産の経験の無い女性の発生リスクが高いとされます。


     初期に自覚症状の現れ難い卵巣癌は発見されたときには、進行している事が少なく有りません。また、卵巣癌

     はかなり早い段階で転移や浸潤を始める癌でもあります。進行すれば、卵巣の壁を突き破り、腹腔や腹膜に癌

     細胞を撒き散らす腹膜播腫をおこします。一端、腹膜播腫を起こしてしまいますと、小さな癌が膀胱や直腸の

     表面で多数成長し、また、大網や肝臓の表面にも癌が発生してしまうことがあります。卵巣癌患者は発見され

     た時点でその2/3は腹膜播腫を起こしているといわれております。浸潤し易い卵巣癌は、さらに卵管や子宮に

     浸潤して広がり、癌細胞が血流に乗れば、他の臓器に遠隔転移もします。






     §1 卵巣癌(卵巣ガン)


 
    卵巣に出来る腫瘍の 85%は良性です。卵巣は子宮の脇に左右一つづつある親指大の楕円形の臓器です

     (子宮の両側にある卵管漏斗に抱かれた一対の器官が卵巣です)が、問題となる卵巣癌はこの卵巣に発生

     する悪性腫瘍です。卵巣癌の罹患率は女性.の癌全体の30%程度でその死亡数は日本では40年間で5

     倍程度に増加している疾患です。この数字はベースが小さいため単に倍率で論議は出来ないと思いますが、

     間違いなく増加しております。(その数字は1、4人/1960年・10万人→6、6人/2003年・10万人)です。

     卵巣に出来る腫瘍のうち最も多いのは上皮性

     腫瘍で卵巣の表面を覆う細胞です。良性腫瘍

     と悪性腫瘍、良性・悪性の中間的な性質をも

     つ境界悪性腫瘍があります。(卵巣表面;

     上皮性腫瘍/腫瘍の多くが水様液、粘液の中

     に入っている嚢胞で組織が詰まっている充実

     性のものもあり、嚢胞のみであれば良性、多

     少でも充実性のものがあれば悪性となりま

     す。)





            -卵巣の位置模式図-

         -卵巣構造と卵巣癌模式図-
その他卵子の元になる胚細胞から発生する

細胞性
や胚細胞と上皮の間から発生する間質

性細胞腫瘍
もあります(胚細胞を包む卵胞の

一部;間質性腫瘍)。最も多いのは卵巣表面

を覆う表層上皮性細胞から発生する腺癌で卵

巣癌全体の60%を占めます。腺癌の大部分

は漿液性嚢胞腺癌と粘液性嚢胞腺癌です。

15%は卵細胞(胚細胞)から発生する悪性

腫瘍、20%は胃癌や乳癌などからの転移性

卵巣癌
です。卵巣癌は抗癌剤によって延命

が期待できる癌の一つとされております








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§2 卵巣の構造/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     
卵巣は子宮の左右に一対ありその形はアーモンドの様ともいわれます。大きさはほぼ親指大といったところで、

     出生の時にはこの一対の臓器の中に、約200万個の原始細胞が蓄えられていると考えられております。それが

     成長と共に減り、初経時で40万個、20歳前後で16万個といわれております。多くの臓器は腹膜で覆われて

     いるのですが、この卵巣だけは腹腔に露出した状態であり、そのため、排卵した卵子が腹腔に出て行くことが

     できます。
卵巣の表面を覆っているのは表層上皮でその下は卵巣白膜という間質、その下が皮質になっています。

     卵巣内部には胚細胞である卵子が存在します。その卵子に周囲には顆粒膜細胞、莢膜細胞といった卵巣に固有の

     性索間質細胞が取り巻いています。これが卵胞です。卵胞は原始卵胞〜発育卵胞〜成熟卵胞と発達して排卵に

     至ります。


     排卵後にまた、黄体が形成される生理的プロセスとなり、性索間質細胞から女性ホルモン(エストロゲン)、

     プロゲステロンが産生されるわけです。黄体は卵子が.しないと白体という退行した状態になります。卵巣の

     中心には髄質がありそれらの周囲も間質で埋められています。


     (御参考に卵巣構造と卵巣癌模式図もご覧下さい。)




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§3 卵巣癌卵巣ガン・卵巣がんの発生要因


     卵巣癌は妊娠と出産との関係が深いといわれ、出産回数の多い人ほど卵巣癌に罹り難く、不 妊や、出産を経験

     しない人には罹患率が高いことが報告されています。妊娠、出産は排卵の回数を減らしますのでそれだけ卵巣癌の

     発生の機会が減るのではないかという考えからです。子宮体癌と類似している部分があります。卵巣癌は閉経後に

     多くなる事からゴナドトロピンとゴナドトロピン放出ホルモンの影響も考えられております。更年期に入り、卵巣の

     働きが落ちてエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が少なくなり、視床下部はこれを補うために、ゴナドトロピン

     放出ホルモンを増やし、その刺激でゴナドトロピンの分泌量が増加します。

その結果ゴナドトロピン及びゴナドトロピン放出

ホルモンの量が多くなる事が、卵巣癌の発生、発育

に関係しているという考え方です。卵巣癌の組織から

はゴナドトロピン放出ホルモンやその受容体が検出

されております。また、卵巣癌の全てからエストロ

ゲンの受容体、プロゲステロンの受容体も検出されて

います。子宮内膜症も又、卵巣癌のリスクを高めてい

ると考えられております。その他、一部の子宮内膜症

は前癌状態として指摘されておりますが、この子宮

内膜症は不 妊や、ホルモンの機能異常とも関係があり、これらは卵巣癌の発生リスクを高めているのではないか

といわれています。


     * ゴナドトロピン放出ホルモンが分泌されるとその刺激で下垂体からゴナドトロピンが放出されますが、この

     ゴナドトロピンには卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)があり、卵胞刺激ホルモンは卵巣内

     の卵細胞を成熟させ、黄体化ホルモンは成熟した卵細胞から卵子の排出を促がします。卵細胞は成熟して行く

     間にエストロゲンを分泌して子宮内膜を増殖させ、卵細胞は排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)を分泌し

     子宮内膜は.・着床に備えます。妊娠しなければ子宮内膜は脱落し月経となるわけです。






     
§4 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の種類


     下記表中の境界悪性腫瘍は良性と悪性の中間の状態の腫瘍で、この全てが前癌状態であるか言い切れず、

     明確なところはまだ判明していません。(悪性化するものも有りますし、そうでないものもあります。)

     表層上皮性腫瘍(表層上皮が間質に取り込まれ、封入嚢腫となり、腫瘍化したものです。)が卵巣癌全体の70%

     を占めるといわれ、ついで卵細胞から発生する胚細胞腫瘍(20歳前後に多い)、性索間質性腫瘍(この腫瘍の

     多くはホルモンを産生する細胞から発生)の順になっております。


                                 
-卵巣癌の分類表-

良性腫瘍 境界悪性卵巣腫瘍 悪性卵巣腫瘍
表層上皮性・間質性腫瘍 漿液性嚢胞腺腫
粘液性嚢胞腺腫
類内膜腺腫
明細胞腺腫
腺線維腫
表在性乳頭腫
ブレンナー腫瘍
漿液性嚢胞腺腫、境界悪性(低悪性度腫瘍)
粘液性嚢胞腺腫(同上)
類内膜腺腫(同上)
明細胞腺腫(同上)
腺線維腫(上記各型)
表在性乳頭腫、境界悪性(低悪性度腫瘍)
ブレンナー腫瘍、境界悪性(増殖性)
漿液性(嚢胞)腺癌
粘液性(嚢胞)腺癌
類内膜腺癌
明細胞腺癌
腺癌線維腫(上記各型)
腺肉腫
中胚葉性混合腫瘍(ミューラー管混合腫瘍・癌肉腫)
悪性ブレンナー腫瘍
分化
性索間質性腫瘍 莢膜細胞腫
線維腫
硬化性間質性腫瘍
セルトリ・間質細胞腫瘍(高分化型)
ライディック細胞腫
輪状細管を伴う性索腫瘍
顆粒膜細胞腫
セルトリ・間質細胞腫瘍(中分化型)
ステロイド(脂質)細胞腫瘍(分類不能)
ギナンドロブラストーマ
線維肉腫
胚細胞腫瘍 成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢胞腫)
成熟充実性奇形腫
卵巣甲状腺腫
未熟奇形腫(G1・G2)
カルチノイド
甲状腺腫性カルチノイド
分化胚細胞腫
卵黄嚢腫瘍(内胚葉洞腫瘍)
胎芽性癌(胎児性癌)
多胎芽腫
絨毛癌
悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫
未熟奇形腫(G3)
その他 非特異的軟部腫瘍
腺腫様腫瘍
.芽腫(純粋型) 癌腫
肉腫
悪性リンパ腫(原発性)
二次性(転移性)腫瘍

                                              by 日本産婦人科学会・日本病理学会




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§4−1 表層上皮・間質性腫瘍/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)卵巣構造と卵巣癌模式図も御参考にご覧下さい)


     漿液性腫瘍と粘液性腫瘍が大部分を占めます。卵巣の表層上皮を発生起源とするもので発生学的には、根拠や

     考え方が有りますが、混乱を招くため、ここでは扱いません。但し、卵巣表層上皮がミュラー管上皮の方向に

     分化する能力があり、卵管上皮方向へ分化したものが漿液性腫瘍、子宮内膜の方向へ分化したものが類内膜

     腫瘍や明細胞腫瘍、頸管腺上皮の方向へ分化したものが粘液性腫瘍と考えられているという事があります。





     
§4−2 性索間質性腫瘍/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん) (卵巣構造と卵巣癌模式図も御参考にご覧下さい)


     
このカテゴリの腫瘍の多くはホルモンを産生する細胞から発生しますので、ホルモン産生過剰に基づく臨床症状が

     重要になります。これらの腫瘍の中でセルトリ・間質細胞腫瘍には悪性のものがあります。顆粒膜細胞腫(多くは

     充実性の腫瘤を形成します。大きな卵胞様構造を形成すれば嚢胞性の部分も混在する様になる。)や莢膜細胞腫

     (嚢胞性成分は認められず、充実性の比較的小さな腫瘤を形成する)はエストロゲン産生性で、不正.出血、

     無月経、思春期早発などをきたします。高齢女性で内診の結果、年齢にしては膣壁がみずみずしければエストロ

     ゲン産生卵巣腫瘍を疑います。線維腫は充実性の腫瘤を形成し、通常はホルモン産生性は乏しい。腫瘍マーカー

     は血中ホルモン値で血中エストラジオール(顆粒細胞腫、莢膜細胞腫)、血中テストステロン(セルトリ・間質

     細胞腫瘍、ライディク細胞腫)の上昇が確認されます。






     
§4−3 胚細胞腫瘍/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん) (卵巣構造と卵巣癌模式図も御参考にご覧下さい)


     若い女性に多く見られる癌です。良性の成熟嚢胞性奇形腫が最も多く、茎捻転を起こし易い腫瘍としても知られて

     います。妊婦検診で発見される事もあります。嚢胞性の腫瘤ですがその内部に奇形性の皮膚組織、毛髪、皮脂腺

     より分泌される脂肪、軟骨、骨などを含むためその発現は多彩になります。脂肪成分はMRIが検出に優れた力

     を発揮する。嚢胞性腫瘍の内部に脂肪が確認されれば成熟嚢胞性奇形腫とほぼ断定されます。腫瘍マーカーは

     CA19-9の軽度の上昇が確認されることが多い。他の胚細胞腫瘍はまれの頻度ですが、悪性腫瘍、極めて悪性で

     進行が速いなど早期発見、早期治療が極めて決め手になります。画像診断と腫瘍マーカーで術前鑑別診断が可能

     とされています。術前に確実な診断を得れば、妊孕性温存も可能とされているため医療関係者には的確な方向性

     がもとめられます。





    
 §4−4 転移性(二次性)卵巣腫瘍/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     最も頻度が高いのはクルーケンベルグ腫瘍で消化器系(胃癌、直腸癌、胆管癌など)の癌や乳癌からの転移した

     充実性の癌で、両側の卵巣に出来る事が多い。周囲と癒着しない腫瘤を形成します。腫瘍マーカーはCEA.CA19-9

     など様々なマーカーが上昇し、AFPの軽度な上昇もその半数に認められます。画像で両側性の充実性の腫瘤が

     あり、CEAが上昇するのを確認した場合は、このクルーケンベルグ腫瘍を疑う。近年の大腸癌の増加に伴い、

     大腸癌の卵巣転移も増加している。この場合は多房嚢胞性部分を主体とする腫瘤を形成し、クルーケンベルグ

     特有の充実性腫瘤とはならず、卵巣原発の粘液性嚢胞腺癌との鑑別が必要になるため、術中にその確認作業が

     なされます。





     
§5 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の罹患世代


     幼児から老年まであらゆる世代の女性が罹患します。20歳以下は15%、20〜40歳は40%、40〜閉経期

     までは45%で40歳代がピークを示しております。




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§6 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の危険因子


     卵巣癌の種類も30歳代までは卵細胞から発生するものが多いのですが、それ以降になりますと腺癌が多く

     なります。腺癌は肥満、糖尿病、高血圧症、喫煙、動物性脂肪の摂取過多、未婚の女性、未産婦などが危険

     因子に上げられており北欧やイスラエルなどは日本人より更に5倍程度、多発しておりますが、原因は特定

     できません。(卵巣腫瘍は月経回数の多い人に発生し易いといわれます。つまり経年の中で妊娠、出産の

     多い人は月経回数が少ないわけですが、逆に月経回数が多いということは、その分、卵巣からの排卵の回数

     が多くなりますがこれが卵巣癌と関わっているのではないかと考えられているわけです。実際、卵巣腫瘍は

     妊娠経験の無い人に高率であることも分かっております)




 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の症状

 
初期の自覚症状は殆どありません。多くは下腹部に

 しこりを感じる、触れる、腹部が膨らんでいるなど

 から気づきますがそのあたりでは既にV期まで進行

 しているといわれます。腫瘍が成長し腹水が増加す

 ると膀胱や直腸を圧迫し、頻尿や便秘にもなります

 。更に卵巣癌が進行すれば貧血や悪液質(極度に体

 力を消耗した状態)になります。早期発見には定期

 の検査が重要になります。

卵巣は女性の身体の中でも最も腫瘍が出来易いとされ、卵巣の腫瘍は良性が多い中では卵巣癌は悪性の

腫瘍です。卵巣癌の中では腺癌が6割を占め原発性の卵巣癌ばかりではなく、他から転移した転移性の

癌が2割程度あります。自覚に乏しい癌のため、発見時(気づいた時)はV期、W期ということもあり

ます。転移スピードも早く、細胞診、組織診も難しく早期発見早期治療が極めて難しいとされる癌です。

自覚症状の乏しい卵巣癌ですが、茎捻転といい卵巣腫瘍の茎に当たる部分が捻じれてしまうことがあり

ます。これを起こしますと、腫瘍内部に鬱血や出血を起こし、激痛が下腹部を襲い、吐き気や嘔吐など

を伴う事もあります。腫瘍が一定の大きさ以上になると起こりやすく、これが卵巣癌発見の端緒になる

事もまれにあります。但し、これは悪性でなく、良性の腫瘍で起こる事が多いとされます。茎捻転は卵

巣の正常部分までダメージを受けますので、早急の婦人科受診が必要になります。


性索間質性腫瘍の中にはホルモンを産生するものがあり、これによりエストロゲンを産生する癌は閉経

後の月経が起きたり、閉経前では月経不順、男性ホルモンを産生する癌では、声が太くなる、毛深くな

る、陰核が大きくなる、などがあります。更に帯下の増加や癌による周囲組織への圧迫から腰痛や排尿

痛、排尿障害、排便障害の自覚もありえます。






     §7 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の検査

     検査は腹部超音波、経膣超音波検査、骨盤部MRI検査、PET検査、腫瘍マーカー(CA125/T期50%陽性、U期

     〜90%陽性、健常者でも1%は陽性、子宮筋腫、骨盤内炎症、子宮体癌、膵臓癌でも感知するケースもある

     その他の腫瘍マーカー/CA19-9STNCA602CA546GAT)。PETは卵巣に腫大が有る場合、良性、悪性の判定

     も可能で、転移、再発(卵巣腫瘍は大網、腹膜に転移しやすい)の診断も可能という大きな利点があります。
卵巣癌

     は多くの医療機関で経膣超音波検査が実施されています。卵巣の腫れの状態はこの方法で容易にわかります。




     
卵巣癌が疑われた場合、子宮癌や他臓器の癌との鑑別、卵巣の腫瘤が悪性の腫瘍なのか、類腫瘍病変なのか、

     組織型の卵巣癌か術前に推定する事になります。卵巣腫瘍が嚢胞性(内部に液体を含有する)か充実性かを鑑別

     するのがポイントとされ、嚢胞性なら壁が薄ければ殆ど良性であり、嚢胞壁に充実性を持つ腫瘤全体が充実性の

     場合は悪性のことが多いという傾向です。そこでまず、超音波検査により画像診断で腫瘤の所見を得る事になり

     ます。

     経膣プローブを用いた超音波により小さな卵巣の腫大を捕らえ、嚢胞内の充実部分を確認します。MRI検査は

     腫瘤の内部にどの様な物質が溜まっているのかを推定します。腫瘍内部のものが、水様性で有れば漿液性腫瘍の

     疑いもあり、古い血液であれば子宮内膜症性嚢胞を疑い、脂肪であるのなら成熟嚢胞性奇形腫が疑われるという

     具合です。CT検査は腫瘍の転移の有無を確認し、PETは主として再発の診断などに用いられます。腫瘍マーカー

     も補助的な手段として組み合わせて腫瘍が産生する成分を血液中に確認してゆく事も重要になります。





            -ダグラス窩穿刺-

腹水に貯留が認められる時に、腹壁穿刺

orダグラス窩穿刺により、腹水細胞診を実

施し、細胞の悪性度の判定、組織型、分化

度の推定をします。また、子宮膣部、ある

いは内膜細胞診を行う事により、卵巣癌細

胞を特定できる時もあります。





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§8 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の療法


     原則として手術可能である場合は手術が選択されます。@卵巣の切除/片側の卵巣、卵管だけを切除する場

     合も有りますし、両側の卵巣、卵管、子宮を含めた摘出術をする場合もあります。A大網切除/体網と呼ば

     れる衣から垂れ下がり、大腸、小腸を覆っている大きな網のような組織の事です。
B後腹膜リンパ節郭清/

     この部位も卵巣癌の転移の起こしやすい部位です。原則この@〜Bが選択されますが、症状により大腸、小

     腸、脾臓などを合併切除する事もあります。腫瘍が完全に摘出できるのはT期U期の一部だけで病期が進

     みますと腫瘍の取り残しの危険もあるので十全の摘出に加えて抗癌剤による化学療法が併用されます。化学

     療法としてはシスプラチンタキソールなどが用いられたり、さらに再発の場合は放射線療法も併用され

     たりする事があります。




     
§8−1手術療法/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     
卵巣癌と考えられる場合はこれを確定する必要が有りますが、手術療法による組織学的な診断でこれを行います。

     開腹時の腹水中の癌細胞を確認する細胞や腹腔内洗浄細胞診も行います。良性であれば卵巣腫瘍摘出術、卵巣

     摘除術、付属器摘除などを行います。その際、患者の年齢や腫瘍の大きさ、癒着の程度などを考慮して術式を選択

     して行きます。若年で、妊孕性温存を望まれる場合は原則、卵巣腫瘍摘出術を選択します。成熟嚢胞奇形腫では

     この術式が多く選択されます。境界悪性卵巣腫瘍では原則、両側付属器摘序術、単純子宮全的術を行い、妊孕性

     温存を望まれる場合は片側付属器切除術を行います。術後の化学療法は選択しません。



     悪性卵巣腫瘍の場合は、標準の手術は両側付属器摘除術、単純子宮全的術、大網切除術、骨盤内及び傍大

     動脈リンパ節郭清で、腹膜の転移を確認する場合はこれを可能な限り摘出します。進行卵巣癌では取り残

     しは極力避ける事の方が、予後は良好の結果があるが、進行卵巣癌で初回手術時にこの処置が不可能と判断

     された場合は、術前化学療法を施した後に手術療法を選択する事になります。何れの場合でも、取り残しは

     再度の手術療法を後日行い、可能な限り腫瘍を除去した方が予後の改善にも繋がる結果になります。悪性卵巣

     腫瘍の場合でも患者さんが若年で妊孕性温存を望まれる場合は、その選択が可能なケースもあります。上皮性

     卵巣癌の場合は進行がTa期で、腫瘍の組織学的悪性度が低い事(grade1 or 2)。悪性胚細胞腫瘍の場合は

     大部分温存手術が可能で、病巣側の付属器切除術を行い、対側卵巣の楔状切除術を行います。






     
§8−2 化学療法/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     悪性卵巣癌の多くは抗癌剤が奏功するので化学療法は手術療法と並ぶ双璧です。多剤併用療法という抗癌剤を

     複数組み合わせて投与する方法が選択されますが、シスプラチンパクリタキセルの登場により、卵巣癌の

     患者さんの予後の大きな改善が期待されている。上皮性卵巣癌は従来、CAP療法CP療法が主体で用いられて

     きたが、近年ではTJ療法DJ療法が第一選択となっています。これらは漿液.癌、類内膜腺癌には有効と

     されますが、粘液.癌や明細胞腺癌には抗癌薬抵抗性で有効なものは開発されておりません。これら薬剤

     抵抗性のものに関しては塩酸イリノテカンや、エトポシドが選択されている。進行期Ta期の卵巣癌で腫瘍の

     組織学的悪性度が聞くければ術後の化学療法は選択されません。悪性胚細胞も化学療法で改善している。以前は

     VAC療法が採用されていたが、PVB療法が登場し、現在ではBEP療法が標準的に選択されています。Ta期

     未分化胚細胞腫や未熟奇形腫では組織学的悪性度が低い場合、化学療法は選択されませんが、それ以外の

     腫瘍は術後化学療法を行います。




     §8−3 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)と化学療法の副作用

     化学療法の副作用は吐き気、嘔吐、白血球減少症、貧血、血小板減少、心筋症状、脱毛、食事が摂れない、

     発熱、動悸、出血傾向などがあります。卵巣を両側摘出した場合には更年期障害と同様の症状が現れます。

     辛い副作用は医師への相談や診察を受けます。脱毛している場合はパーマや髪を染める事も止めます。





     
§8−4 放射線療法/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     悪性卵巣腫瘍の治療においては放射線療法はその意義を認める事は、難しい。これは悪性卵巣癌の進展形式が、

     その主体は腹腔内播種性転移のためで、放射線の照射範囲を限定する事が出来ない事によるためです。




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§9 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の進行期


T期 卵巣内限局発育(約40%)
 Ta 腫瘍が片側の卵巣に限局し、癌性腹水が無く、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
 Tb 腫瘍が両側の卵巣に限局し、癌性腹水が無く、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められないもの。
 Tc 腫瘍は片側or両側の卵巣に限局するが、癌性腹水が無く、被膜表面への浸潤や被膜破綻の認められたり、腹水又は洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの。
U期 腫瘍が片側or両側に存在し、更に骨盤内への進展を認めるもの(約10%)
 Ua 進展ならびに/あるいは転移が、子宮ならびに/あるいは卵管に及ぶもの。
 Ub 他の骨盤内臓器に進展するもの。
 Uc 腫瘍発育がUa又はUbで被膜表面への浸潤や被膜破綻が認められたり、腹水又は洗浄液の細胞診にて悪性細胞の認められるもの。
V期 腫瘍が片側又は両側の卵巣に存在し、更に骨盤外の腹膜播腫ならびに/あるいは後腹膜又は、鼠径部のリンパ節転移を認めるもの。又、腫瘍は小骨盤に限局しているが、小腸や大網に組織学的転移を認めるものや、肝表面への転移の認められるものもV期とする。(約30%)
 Va リンパ節転移陰性で、腫瘍は肉眼的には小骨盤に限局しているが、腹膜表面に顕微鏡的播腫を認めるもの。
 Vb リンパ節転移陰性で、組織学的に確認された直径2p以下の腹腔内播種を認めるもの
 Vc 直径2pを越える腹腔内播種ならびに/あるいは後腹膜又は鼠径リンパ節に転移の認められるもの
W期 腫瘍が片側又は両側の卵巣に存在し、遠隔転移を伴うもの(約20%)
  胸水の存在によりW期とする場合には、胸水中に悪性細胞を認めなければならない。又肝実質への転移はW期とする。

                                        by 日本産婦人科学会、日本病理学会



         -卵巣癌の病期-






     
§10 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の生存率

ステージ 5年生存率の変遷 10年生存率
T 76%→91% 83%
U 34%→72% 66%
V 14%→31% 24%
W 06%→12% 09%






     
§11 卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)の転移・再発


      卵巣腫瘍の転移先は肺(8、4%)、肝臓(12、3%)、結腸/大腸(7、1%)、腹膜(14、6%)、子宮(5、4%)

     というデータがあります。また卵巣癌の最も転移し易いとして知られるのは大網と呼ばれる衣から垂れ下がり、

     大腸、小腸を覆っている大きな網のような組織の事です。一方、他臓器からの転移の中でも代表的な癌に

     クルーケンベルグ腫瘍があります。この腫瘍は胃癌からの転移によるものです。両側の卵巣に発生し、大きくなる

     などの特徴が知られているところです
。乳癌からの転移もあります。卵巣癌は再発がしやすい癌ですので医師の

     指示通りに従い、受診も確実に実施します。腹部に張りを感じたり、腹部が膨れるようであれば再発の可能性が

     有りますのでその場合は即時受診します。






     
§12 再発の治療/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     再発の多い卵巣癌は、初期に発見された場合でも再発の可能性としては小さくない様です。再発の場合には、

     化学療法を行いますが、例外的には、腫瘍が限局しているような場合や治療から時間が経過している時には、

     手術の可能性も検討されます。抗癌剤は最初に使用したものを用いる様にしますが、治療後、半年以内に再発し

     た様な場合や、最初の治療で抗癌剤の治療効果が低い場合には、他の抗癌剤が検討されます。抗癌剤治療が

     効果を示さなければ、放射線治療を行う事になります。




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§13 緩和療法/再発の治療/卵巣癌(卵巣ガン・卵巣がん)


     
卵巣癌は抗癌剤の感受性が高く、症状を和らげるための緩和療法では、副作用の小さいものを選択して、使用

     することができます。腹水が溜まる場合には(腹膜播腫により、癌性腹膜炎が原因で腹水が増える/腹腔内に

     抗癌剤を投与する治療を行う場合もある。)、この管理が重要なワークになります。卵巣癌が進行する事により、

     小腸や大腸でつまりや押しつぶされる事などにより内容物が出難い、腸閉塞などもおこります。この場合には、

     手術が可能であれば、手術を選択し、癌の一部を切除する事もいたします。腸の内部にステントを入れて、内容

     物が通過できるような処置もいたします。この様な治療が不可能であれば、消化器からの分泌液を抑える薬や、

     消化器の筋肉を緩める鎮痙薬などの使用もし、鼻からチューブで消化管に溜まったガスを抜いたり、腸液を抜い

     たり、必要に応じた対処をします。癌が脳に転移すれば、放射線治療を行います。





     * 多剤併用療法などの例/パクリタキセルカルボプラチン(TJ療法)、ドセタキセルカルボプラチン(DJ療法)、

     シクロホスファミドシスプラチン(CP療法)、シクロホスファミドドキソルビシンシスプラチン(CAP療法)、

     イリノテカンシスプラチンドセタキセルイリノテカンイリノテカンパクリタキセルエトポシドゲムシタビン






     
§14 卵管癌(追補)


     卵巣の上側に位置し、子宮体部に連結する卵管に発生する極まれな癌です。殆ど40歳代〜50歳代に見ら

     れる癌で出産経験の無い女性に多いのですがその原因は明確ではありません。下腹部の疼痛、おりもの、不

     正.出血などですが、特有というような症状も無く、診断の難しい癌です。手術は広汎子宮全摘手術、リ

     ンパ節郭清術をします。その場合も術前診断はまれなため、単純子宮全摘術と両側卵管摘出術だけのことも

     あります。予後は一般的に不良で治癒率も25%以下と難しい癌です。化学療法や放射線療法が併用されます。







     * 
ミュラー管


胎生初期に男女両性共に一対の、2種類の性管と

してウォルフ管とミュラー管が発達するが、男性

はウォルフ管が発達し、精管となり、女性はミュ

ラー管から卵管、子宮、膣の上1/3が形成される

(胎生5〜6週ごろ、中腎が発生してくると、

左右の中腎上端からから縦にミューラー管が発生

してきます。胎生7〜8週になると左右のミュー

ラー管は下部から癒合し始め、一つの管を形成し

ます。

しかしその上部は癒合せず後に左右の卵管となります。下部はやがて子宮と膣の上2/3に分化します。)

ミュラー管が欠損すれば子宮欠損や子宮形態異常、単角子宮など様々な形態の異常が確認される様にな

ります。従い、ミューラー管は女性内.の原器です。







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